『A Space for the Unbound』は、2023年1月に発売されたインディーゲームで、インドネシアの開発スタジオMojiken Studioが手がけた2Dアドベンチャー作品。
私もこのあまりにも美しいドット絵に魅了され、クリアまで無事に到達。本作のストーリー、ゲームプレイ、ビジュアル、音楽といった要素を深掘りし、その魅力をレビューする。
インドネシア発の珠玉の青春アドベンチャー
本作は、90年代のインドネシアの田舎町を舞台に、少年少女の青春と心の葛藤を描く本作は、そのノスタルジックな世界観と心に響くストーリーとなっている。ドット絵アート、心温まる物語、そして超常的な能力を駆使したユニークなゲームプレイが特徴だ。プレイヤーは高校生アトマとなり、恋人のラヤと共に、ある不思議な事件を解決していくことになる。
青春と心の痛みを描く感動作
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物語の主人公は、インドネシアの田舎町に住む高校生「アトマ」。
彼は恋人の「ラヤ」とともに、卒業前の限られた時間を過ごしていたが、次第に町で不可解な出来事が起こり始める。
本作の特徴的な要素の一つが、アトマが持つ「スペースダイブ」という能力だ。この力を使うことで、他人の心の中に入り込み、その深層心理を覗いたり、問題を解決したりすることができる。プレイヤーはこの能力を活用しながら、町の住人たちが抱える悩みや葛藤を解き明かしていく。
序盤は穏やかで牧歌的な雰囲気が漂うが、物語が進むにつれ、現実と幻想が交錯する展開が待ち受ける。ラヤの持つ謎の力、アトマの記憶、そして町に迫る異変…。プレイヤーは次第に、心を揺さぶる展開へと引き込まれていく。
特に後半は、「心の痛み」「喪失」「トラウマ」といったテーマが色濃く描かれ、単なる青春物語では終わらない。どこかジブリ映画を思わせるような雰囲気もあり、エモーショナルな体験を求めるプレイヤーにはたまらない内容だ。
シンプルながら没入感のあるアドベンチャー
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『A Space for the Unbound』のゲームシステムは、横スクロール型の探索アドベンチャーがベースとなっている。プレイヤーは町を歩き回り、住人と会話し、時にはパズルを解きながら物語を進めていく。
特徴的なシステムとして、「スペースダイブ」がある。アトマは特定の人物の心の中に入り込み、その人が抱える問題を解決することで、物語が進行する。
スペースダイブの活用例
- いじめに苦しむ生徒の心の中に入り、勇気を与える
- 自信を失った画家の心の中で、創作意欲を取り戻させる
- 記憶を失った人物の心の奥底に入り、過去の真実を探る
これらの体験を通じて、単なるパズル解決だけでなく、人の心に寄り添うゲームプレイが楽しめるのが魅力だ。
また、探索の合間には、町の猫たちとふれあったり、ミニゲームで遊んだりと、リラックスできる要素も充実している。こうした細やかな遊び心が、ゲーム全体の雰囲気をより魅力的にしている。
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一方で、本作にはQTE(クイックタイムイベント)が多用されている点も特徴的だ。特に、ストーリーの重要な場面では素早い入力を求められることがあり、アクション要素が苦手なプレイヤーにとってはややストレスを感じる可能性がある。
QTEの難易度は極端に高いわけではないが、物語をじっくり楽しみたいプレイヤーにとっては、やや人を選ぶ要素となるかもしれない。
美しく温かみのあるドット絵
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本作のビジュアルは、手描きのような美しいドット絵で表現されている。90年代のインドネシアの町並みが細かく描かれ、懐かしさと温かみを感じさせる。
特に印象的なのは、空の描写や夕暮れ時の街並み。
光の使い方が巧みで、時間の経過による色彩の変化が非常に美しい。
また、キャラクターの表情や仕草が細かくアニメーションされており、ドット絵ながらも豊かな感情表現がなされている。まるでアニメ映画を観ているような感覚に浸れる。
ノスタルジックで心に残るサウンド
BGMは、ピアノやアコースティックギターを中心とした優しく穏やかな楽曲が多く、ゲームの世界観とマッチしている。
特に、主人公アトマとラヤの関係を象徴するテーマ曲は、プレイヤーの感情を揺さぶる名曲だ。物語の展開とともに、音楽がより印象深く響いてくる。
また、町のBGMもシンプルながら心地よく、まるで90年代の夏の午後にタイムスリップしたような気分にさせてくれる。
まとめ:心に深く響く、珠玉のインディーゲーム
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『A Space for the Unbound』は、ただのアドベンチャーゲームではない。青春の輝きと喪失、現実と幻想が交錯する感動の物語を体験できる、インディーゲームの傑作だ。探索アドベンチャーが好きな人、心に響く物語を求める人には間違いなくおすすめできる作品。特に、「UNDERTALE」や「Night in the Woods」のようなゲームが好きな人には刺さるはずだ。
最後のエンディングを迎えたとき、きっと何か大切なものを思い出すだろう。
プレイ時間:約10時間
プラットフォーム:PS5
レビュータイミング:クリア後