「FINAL FANTASY XVI | ファイナルファンタジー16」評価・レビュー 

2023年6月、国民的RPGの金字塔「ファイナルファンタジー」のナンバリング最新作「FF16」が満を持してリリース。前作のFF15 が賛否両論であったことから、本作もユーザの期待と不安が交錯。私もようやくクリアまで到達したので、良かった点、気になった点を掘り下げたい。

ナンバリングにふさわしい正統ファンタジーRPG

『FINAL FANTASY XVI』 ローンチトレーラー「SALVATION」

「FF」シリーズは、国民的RPGであると同時に、初心者から、コアゲーマまで、幅広いユーザに楽しんでもらわなければならないという難しい使命も課せられたゲームタイトルであると感じる。そういう意味で、本作は、随所に誰もが楽しめるよう、ユーザビリティや難易度等、ゲームプレイ上、様々な配慮、工夫が施されている。

大人こそが楽しめるシナリオ

本作のストーリーは、重厚でシリアスな物語が展開されていく。

主人公クライヴ・ロザフィールドが、幼い頃に召喚獣の力を宿した弟ジョシュアと共に、魔法生物や蛮族の襲撃に苦しむ王国のナイトとして戦い、様々な出来事に巻き込まれていく中で、自身の運命や世界の真実に直面しながら、仲間や敵との関係を築いていく。

クライヴの成長や復讐、ジョシュアの秘密や運命、召喚獣や魔法の謎など、それぞれの登場キャラクターの人間性が深く掘り下げられており、全体を通して、大人向けのシナリオを存分に楽しむことが出来た。

没入感の高い美麗なグラフィック

シリーズ最高峰の美麗なグラフィック

本作のグラフィックは、昨今のPS5等で登場するゲームタイトルの中で、突出してグラフィック表現のレベルが高いという印象はないものの、PS5の性能を活かした美麗な映像で、世界の細部まで表現されている。特に、召喚獣や魔法の演出は圧巻で、迫力あるバトルを楽しめた。また、キャラクターの表情や動きもリアルで、画面を通して、感情の変化まで伝わり、高い没入感を感じられた。

アクションRPG初心者でも楽しめる戦闘システム

本作の戦闘では、従前のシリーズで主流であったコマンドバトルから一転し、完全なアクションバトルが採用されている。

プレイヤーは基本的には、主人公クライヴを操作することになるが、非常にシンプルな操作で、多彩で迫力のあるアクションを楽しめるように設計されている。近接攻撃、魔法、アビリティなどを使って戦うと同時に、タイミングよく回避したり、パリィーの要素もあり、単純な中にも戦略性があり、慣れていくにつれ、楽しくなっていく。ゲージを貯めて、召喚獣の力を使うことも可能だ。

丁寧に作り込まれたナビゲーション

重厚長大なRPGをやっていると、登場人物やその背景など、記憶が混乱したり理解が出来ず、没入感を削がれることがある。その点において、本作は、非常に痒い所に手が届く3つのシステムが導入されており非常に素晴らしい。今後のRPGにおける模範解答の1つと言ってよいだろう。

アクティブタイムロア

アクティブタイムロア

ゲーム中は、イベントシーンでタッチパッドを長押しすることで “アクティブタイムロア”という画面を呼び出し、メインストーリーに登場したキーワードを確認することが出来る。直近の関係する用語などや状況がすぐに理解でき、非常に親切な作りとなっている。

ハルポクラテスの備忘録

ハルポクラテスの備忘録

ハルポクラテスという老人が登場するが、彼に話しかけると、作中に登場した人物やキーワードの解説を詳細に確認することが出来る。さながら、FF16の百科辞典のようである。

ヴィヴィアンレポート

ヴィヴィアンレポート

ヴィヴィアンレポートも、作中に登場する女性キャラクターであるが、メインストーリーの世界情勢を時系列に、分かりやすく振り返ることが出来る。プレイとプレイの間に時間が経ってしまい、物語を忘れてしまった場合に振り返ったりする用途に使える。

後半存在感を高めるサブクエスト

豊富なサブクエスト

昨今のRPGでは、サブクエスト、サブストーリーは、もはや必須の要素でもあるが、本作においても、十分な数・ボリュームのサブクエストが用意されており、本作に厚みを与えている。

ただ、ゲーム序盤のサブクエストは、いわば「お使いクエスト」という印象を持たざるを得ない、退屈なクエストが大半を占めている。AAA作品にも関わらず、ややもすると手抜きとも捉えられかねない内容のクエストが、特に序盤に続くが、こうしたRPG自体に慣れていないユーザを配慮し、シンプルなお使いクエストを序盤に配置したのだろうと推察する。

しかし、ゲーム後半からサブクエスト自体のシナリオも深みを増し、FF16 の世界観や各サブキャラクターを掘り下げていく重要な役割を果たすことに成功している。

決して、「ウィッチャー3」のような選択肢が豊富に用意されて展開が変わるようなシナリオにはなっていないが、十二分に楽しませてくれる内容になっている。

国民的RPGが挑戦した”引き算”の美学

本作は、従来のシリーズと比較し、徹底した引き算がなされている印象を受けた。

例えば、武器やアイテムの種類もずいぶん少なくなった印象であるし、過去作にはあった、ジョブチェンジやマテリアルを組み合わせて主人公を強化するといった遊びも省略されている。

また、前述の通り、本作では戦闘は、基本的には主人公を操作するのみで、仲間はNPCとして勝手に戦闘に参加する形になっている。複数の仲間キャラと連携し、バフ、デバフの魔法をどう使うか等、繊細な戦略を考えて戦闘を進めるところに醍醐味があったが、アクションバトル採用と同時にこのあたりも整理された印象だ。

このような簡略化は、時にFFらしさを損なってしまったり、ゲーム性の奥深さが薄まってしまう可能性があることから、ゲーマに慣れたプレイヤーほど物足りなさを感じるところは否定できない。

FINAL FANTASY XV
FINAL FANTASY VII REMAKE

FINAL FANTASY XVI
プレイ時期:2023年10月
プレイ時間:約70時間
プラットフォーム:PS5
レビュータイミング:クリア後
シナリオ
グラフィック
音楽
新規性
やり込み度
良いところ
誰もが楽しめるアクションRPG
重厚なダークファンタジー
完璧なナビゲーション
気になるところ
一部ライティングが暗すぎるところがある
後半のバトルがやや大味
前半のお使いサブクエスト
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