「As Dusk Falls | アズ・ダスク・フォールズ」評価・レビュー

『As Dusk Falls(アズ・ダスク・フォールズ)』は、英国のスタジオ Interior Night が開発し、Xbox Game Studios から2022年に発売されたインタラクティブ・ドラマゲームである。本作は1998年のアリゾナ砂漠地帯で起きた一つの事件を軸に、二つの家族の運命が30年にわたり交錯していくという壮大な物語を描いている。

これまでにない、パラパラ漫画のようなビジュアル表現が印象的で、そのうちにプレイしようと決めていたがこの度、ようやくプレイし、クリアまで到達出来たのでレビューする。

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重なる運命が描く、人間ドラマの傑作

As Dusk Falls – 公式トレーラー

舞台はアメリカ南西部、アリゾナ州の小さな町。
車の故障をきっかけに立ち寄った平凡な一家「ウォーカー家」と、金に困った若者たち「ホルト兄弟」。この偶然の出会いが、やがて取り返しのつかない事件へと発展していく。

物語は1998年の事件と、その後の年月を経た登場人物たちの人生を交錯させながら進む。
単なる犯罪サスペンスではなく、「家族」「罪」「許し」といったテーマが重層的に描かれ、人間の弱さと希望をリアルに映し出している。


物語を動かす選択肢

本作の中心は、プレイヤーの選択による分岐である。
会話の一つひとつ、行動の一つひとつがキャラクターの運命を左右し、最終的には全く異なる結末へと導く。

特筆すべきは、最大8人までのマルチプレイ対応である点だ。
家族や友人と一緒に同じ物語を進め、どの選択を取るかを多数決で決めていく――まるで一緒に映画を観ながら議論しているような感覚になる。

アクション要素は少なく、クイックタイムイベント(QTE)なども最低限に留められている。
その分、プレイヤーは物語の展開に集中できるよう設計されており、ゲーム初心者でも安心して楽しめる構成である。


静止画のようで、動的なドラマ

『As Dusk Falls』の最大の特徴は、その独自のビジュアル表現である。実写映像をベースにした俳優の写真を手描き風に加工し、静止画とモーションを繋ぐようにして展開するスタイルは、他に類を見ない。

最初は違和感を覚えるかもしれないが、物語が進むにつれてその絵画的表現がもたらす“静かな臨場感”に引き込まれていく。
まるでアート作品とドラマが融合したような体験であり、ゲームでありながら映画的没入感を得られる。

良かった点

1. 登場人物のリアルな描写

善悪の単純な区分がなく、どの人物も欠点と葛藤を抱えている。
誰かを完全に責めることも、完全に擁護することもできない――その人間臭さがドラマの厚みを生んでいる。

2. 選択の重みと再プレイ性

「もし、あの時別の選択をしていたら……」という感情が自然に生まれる。
分岐の数が多く、何度もプレイして他の結末を見たくなる作りである。

3. マルチプレイの新しい体験

オンライン・ローカル問わず複数人で遊べる設計は、選択型ドラマとしては珍しい。
誰かと議論しながら進めることで、“一人で観る映画”が“みんなで体験するドラマ”に変わるのだ。


気になった点

1. ゲーム的な手応えの薄さ

ストーリー重視ゆえに、探索やアクション要素がほとんどない。
「操作して遊ぶ」よりも「見て選ぶ」感覚に近いため、ゲーム性を求める人には物足りなく感じられるかもしれない。

2. 終盤のテンポと余韻

序盤の緊張感に比べ、後半はやや勢いを失う印象がある。
結末もやや余韻を残す形で、完全に物語が閉じるわけではない点は賛否が分かれるだろう。


まとめ

『As Dusk Falls』は、ゲームという枠を越えて人間ドラマを体験させる作品である。銃撃戦や派手な演出はないが、登場人物たちの心の揺らぎを自らの選択で見届ける感覚は、他のゲームにはない深さを持つ。

一人でじっくり物語を噛みしめたい人、または家族や恋人と一緒に“どんな選択をするか”を語り合いたい人にこそ勧めたい。

一周約6~7時間程度のプレイ時間となる。分岐が多く、全てのシーンをプレイしようとすると、それなりの時間を要することになる。

プレイ時期:2025年11月
プレイ時間:約7時間
プラットフォーム:PS5 Pro
レビュータイミング:クリア後
シナリオ
グラフィック
音楽
新規性
やりこみ度
良いところ
独特のアートワーク
先の気になるストーリーテーリング
気になるところ
やや作業感のあるQTE
終盤の物語展開
3.8