あの名作「Life is Strange」を開発したDontnod Entertainmentが贈るアドベンチャー「Tell Me Why」。LQBTをテーマにしつつ、温かいヒューマンドラマに浸りたい気分になり、発売から約3年目にようやくプレイし、エンディングまで迎えることが出来たのでレビューする。
双子の絆と過去の謎を解き明かす感動的なアドベンチャー
本作は、双子の兄妹であるタイラーとアリソンを主人公とし、二人が過去に隠された悲劇の謎を解き明かす物語である。ゲームは、双子が幼少期に経験した出来事を掘り下げる形で進行し、彼らの間に特別な絆と能力が存在することが大きなテーマとなっている。
タイラーはトランスジェンダーの男性であり、この要素がゲームの物語に深く関与している。プレイヤーは、双子が持つ能力を駆使し、彼らの過去を再構築しながら、母親の死にまつわる謎を解いていく。物語は感動的かつ人間味あふれる描写に満ちており、プレイヤーの選択がエンディングに影響を与える形で進んでいく。
ストーリーの深みとキャラクターの成長
本作は、過去に母親を亡くしたタイラーとアリソンが、再びその家を訪れることから始まる。彼らが直面するのは、母親の死に関する記憶と、彼らの幼少期に起きた悲劇である。ゲームを通して、プレイヤーは彼らの絆を深めるとともに、母親が何を考え、何が原因でその悲劇が起きたのかを知ることとなる。
タイラーのトランスジェンダーのアイデンティティも物語の重要な部分を占めており、このテーマは非常に丁寧に扱われている。彼の成長や自己受容の過程が描かれており、家族や社会の反応に対する描写がリアルで共感を呼ぶものとなっている。
ゲームプレイとメカニクス
本作は、プレイヤーが双子の視点を行き来しながら物語を進める選択型アドベンチャーゲームである。プレイヤーは二人の間に共有される超自然的な能力を活用し、過去の記憶を再現して真相を探る。双子が見た記憶は時に異なり、プレイヤーはどちらの記憶を信じるかを選択する必要がある。
プレイヤーの選択は物語の展開に影響を与え、結末が異なる複数のエンディングに繋がる。このシステムにより、プレイヤーは双子の絆を深めたり、あるいは疎遠にさせたりと、物語の方向性を大きく左右することができる。探索要素も多く、環境を調べることで新たな発見がある点が、ゲームの深みを増している。
サウンドとビジュアルの優れた演出
本作の背景となるアラスカの自然は、非常に美しく描かれており、プレイヤーを没入させる効果がある。アラスカの山々や湖、古びた家々の風景が、キャラクターたちの感情的な旅を補完するかのように展開されていく。
音楽も物語の雰囲気を高める要素であり、繊細で感動的なメロディが印象的である。特に感情的なシーンで流れる音楽が、プレイヤーの心に響き、ストーリーの深みをさらに引き立てる。
冗長なパズルセクションと変化の乏しい選択肢
本作のゲーム進行はややスローであり、アクション性が乏しく、じっくりと物語を楽しむタイプのゲームであるため、人によっては物足りなさを感じる場面もあるだろう。特にパズルセクションでは、長いテキストブックを読む必要があり、やや冗長に感じた。
また、選択肢が物語に与える影響が限定的で、リプレイ性という点でも物足りなさを感じた。
まとめ
「Tell Me Why」は、感情的で深い物語を重視したいプレイヤーにとって、非常に魅力的なアドベンチャーゲームである。双子の絆や過去の謎に焦点を当てた物語は、多くのプレイヤーに共感を呼び、特にタイラーというキャラクターの描写は、ゲームの多様性に大きく貢献している。DONTNODらしいストーリーテリングの巧みさが光り、視覚的・聴覚的な要素もプレイヤーをゲームの世界に引き込む。
アクション性やテンポの速さを求めるプレイヤーには向かないかもしれないが、深く感動的な物語を体験したい人には、非常におすすめの作品である。家族やアイデンティティ、記憶の曖昧さといったテーマに触れながら、プレイヤー自身の選択で物語を紡ぐ体験は、ゲームならではのインタラクティブな魅力を存分に感じることができる。
今後も継続されるかは分からないが、毎年、6月の「プライド月間」に合わせて,「Tell Me Why」(PC / Xbox One)の無料配信がSteamとMicrosoft Storeで行われている。6月になったら、忘れずに本作を無料で入手しよう。
プレイ時間:約10時間
プラットフォーム:PC
レビュータイミング:クリア後