PS5が登場して1年以上が経過し、いよいよ次世代ゲームタイトルもそろい踏みしてきた昨今。そんな中でも、PS5の真打ちタイトルとして待望されていた「Horizon Forbidden West(ホライズン・フォビドゥン・ウェスト)」。
圧倒的グラフィックと、前作の高評価を受けてプレイ前から期待値の高い本作。ようやくクリアまで到達することが出来たためレビュー。ちなみに、前作「Horizon Zero Dawn」もクリア済である。
前作からの正統進化
超絶美麗グラフィック
前作の時点で、当時のゲームのグラフィックとしては、最高レベルの品質を誇っていたが、今作においても、もはや新次元のレベルのグラフィック、作り込みを実現している。
おそらく2022年の段階で、PS5はもちろん、すべてのゲームの中でも、最も美しいゲームの1つではないだろうか。個人的には、ゲーム中盤以降訪れる海岸の波の表現や、機械獣に乗って空から見下ろした遠景の表現などは、思わず手を止めて見とれてしまうほどであった。
本作では、FPSを優先した「パフォーマンス」モードと、解像度を優先した「解像度」モードを自由に切り替えてプレイすることが出来る。
前者は60FPSを実現する代わりに、細部のグラフィック表現、特に細かいエフェクト等が省略される形になる。その代わりに画面は滑らかに動作するので、最近のゲーマーはこのモードが快適かもしれない。
一方、後者の「解像度」モードは30FPSとなる代わりに、本作の最大の魅力でもある超高精細なグラフィック表現を楽しむことが出来る。砂埃や植物の葉、遠くに霞む山脈までこれでもかと言わんばかりの絵画的な映像美が実現されている。
「パフォーマンス」モードでも、十分に美しい本作であるが、個人的には、本作は映像美も製作者が売りにしたいポイントであると想像し、「解像度」モードでプレイした。
モードはゲーム中に、自由に切り替えることが出来るので、気分によって変更するのも一手であろう。
王道のオープンワールド
昨今「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」や「エルデンリング」等、オープンワールドゲームを一段レベルアップしたと評価されるゲームが登場する中、本作においては、どちらかというとトラディショナルな「オープンワールド」ゲームの進化版であると言える。様々なオープンワールドの良い点をしっかりと継承しつつ、最高レベルの品質に引き上げて世界を作り込んでいる印象だ。
例えば、メインストーリーに引けを取らないほどに作り込んだサブクエスト、サブストーリや、ミニゲームとして登場する「ストライク」などは、まさしくあの「ウィッチャー3」のそれを彷彿とさせる構成になっていたりと、過去の名作の手法をうまく本作では昇華している印象だ。
マップの広大さもすさまじいものがあり、少し歩くと何かしらの探索が待っており、景色のバリエーションが豊富で、本当に美しく飽きることがない。
私は約75時間プレイして大部分のマップを闊歩したが、それでも、まだ多数の未踏エリアが残っている。歩いても歩いても何も変化がないオープンワールドゲームも存在するが、本作はそのような場面はなかった。
まさに本作は、最高レベルの「オープンワールド」ゲームではあるものの、逆説的には、「新しさ」という点では、実は訴求すべきポイントは少ない。
荒廃したポストアポカリプスに、機械獣が闊歩するというこのゲームならではの世界観はあるものの、ゲームシステムとしての新鮮さは乏しい。おおむね、過去のゲームで登場したシステムの焼き直しに映るものが大半である。ただこれが悪いということではなく、本作は紛れもなく傑作である。
従って、本作は、目新しいシステムは乏しいものの、これまでのオープンワールドとしての集大成的な作品になっており、特に「ウィッチャー3」や「アサシンクリード オデッセイ」等が楽しめる層には、確実に刺さる作品になっている印象である。
大幅に増加した機械獣
本作には、動物をモチーフにした大量の「機械獣」と呼ばれる敵が登場する。今作では、マンモス(象)や大型の亀形の機械獣なども登場し、前作よりも種類も大幅に増加、動きもバリエーション豊かだ。
緻密に設計された機械の造形美と、まるで生きているかのようなその挙動は、ゲームであることを忘れてしまうほどのレベルに到達している。
前作同様、弓矢で射ると、機械の装甲が少しずつ剥がれ落ち、内装が露わになる表現なども芸が細かい。遥か遠くで、機械獣トールネックが闊歩している様は、芸術の域に達するほど美しい。
強化された近接攻撃
本シリーズは、基本的に弓矢など遠距離攻撃によって攻略する場面が多いが、本作では近接攻撃によるゲーム性が前作以上に強化されており、遊びの幅が広がっている。
弱攻撃と強攻撃を組み合わせて、コンボを決めていく。また本作から登場した「レゾネーターブラスト」は、コンボを繰り返すと敵の部位が青く光り、そこに弓矢を射ることで大ダメージを与えることが出来る新技だ。
ただ個人的には、やはり本作は、ステルス攻撃と、弓矢による攻撃を多用する結果となり、近接攻撃の醍醐味を味わう頻度はやや少なめであった。
充実のUI設定「アクセシビリティ機能」
昨今のゲームには、ゲームプレイ上の各種設定は充実している作品が多いが、本作においても、そのあたりに手抜かりはない。
ゲームの難易度設定から前述したグラフィック設定、字幕の文字サイズ変更はもちろん、インタラクトマーカーの常時設定、物資を拾ったりする際のモーションの有無等、非常に細かくプレイ環境を設定することが可能だ。
また、視覚や聴覚障がい者の方向けのアシストモードも実装されている。ゲーム初心者から上級者まで、しっかりと幅広くサポートしており、非常に好印象。このような充実した「アクセシビリティ機能」は多くのゲームに広がって欲しい限りである。
難易度 | 特徴 |
---|---|
ストーリー | 戦闘が易しく、探索やストーリーに集中したい人向け |
イージー | 戦闘の難易度は低く、探索とストーリーを楽しみたい人向け |
ノーマル | 探索、ストーリー、戦闘をバランスよく体験したい人向け |
ハード | 戦闘に手ごたえを感じたい人向け |
ベリーハード | 高度な戦闘技術が求められる険しい冒険に挑戦したい人向け |
カスタム | 項目ごとに難易度を調整できる |
探索 | HUDの情報は最小限、自分で道を切り開く |
---|---|
誘導 | 画面にマーカーとアイコンを表示し、旅の手助けをする |
やや不満の残るストーリーテリング
本作のストーリは、前作「Horizon Zero Dawn」から約半年経過した時点からスタートする。前作の登場人物はもちろん、前作の伏線などもしっかりと本作で描かれていく形となる。
一応、ゲーム冒頭で前作のシナリオのおさらいを観ることが出来るものの、膨大な固有名詞や難解な世界観もあって、前作未プレイの方や、前作をプレイしてから時間が経過してしまったプレイヤーや、本作の序盤ではやや物語に入り込みにくい状況に陥る印象を受けた。よって、アーロイに感情移入し、ゲームの楽しさにプレイヤーが入り込むのに若干の時間を要する可能性があると感じた。
また前作もそうであったが、ゲーム中に、テキストログを拾って物語の行間を補完する必要があるのだが、そのボリュームの多さは若干疲労するレベルだ。
もう少しゲーム序盤の物語の導入は、分かりやすい目標や前作を思い出させてくれるシナリオを用意して欲しいと感じた。要するに本作は、完全に前作の続編であり、完全なる「アーロイの物語」なのだ。もはや前作プレイ推奨ではなく、プレイ必須と言ってもよい印象である。
一方で、膨大なサブクエスト、サブストーリについては、物語が独立的であり、1つ1つのプロットが明確で身近で分かりやすいので、安心して楽しむことが出来る。序盤は、サブクエスト、サブストーリをプレイしながら、ゲームの全体感を掴んでいく方法がよいだろう。
ちなみに、メインストーリーだけを進めた場合、クリアまでに20時間程度と想定されるが、サブクエスト、サブストーリ等、探索・やり込みも含めて進めていくと75時間~100時間レベルのボリュームとなっている。少なくともボリューム不足感は皆無である。
追加DLC「焦熱の海辺 | Burning Shores」
2023年4月19日、本編への追加DLCとして「焦熱の海辺 | Burning Shores」がリリースされた。焦熱の海辺(Burning Shores)をプレイするには、本編のメインクエスト『特異点』を完了させておく必要がある。本DLCのために、完全新規マップが用意され、舞台も灼熱の火山、熱帯エリアとなる。当然、新たなキャラクターや、新しい機械獣も登場する。
ストーリは、本編を補完するようなシナリオになっており、主人公アーロイが新たな脅威の存在を告げられ、その拠点となる“焦熱の海辺”(ロサンゼルス)へ向かうところから始まる。そこでは新たなパートナー、セイカとともに、未開の地を探索する。
本編もそのグラフィックの美しさに感嘆がやまないが、本DLCにおいては、その美しさにさらに磨きがかかり、どこを切り取っても芸術的映像美が続く。画面から、熱気がそのまま伝わってきそうなほどのリアルさだ。
キービジュアルになっているあの超巨大機械獣をはじめ、新たな機械獣とともに、新たな武器、スキルも登場する。本編を楽しめたユーザであればこのDLCも間違いなく楽しむことが出来るだろう。
ゲームボリュームとしては、サイドクエストや探索をこなして約10時間程度。決して、新しい遊びがふんだんに取り込まれているわけではないが、本シリーズのファンにはマストプレイであり、久しぶりのアーロイとの再会に歓喜できるだろう。
本作のプレイにあたっては、ストーリの展開上、前作をプレイしていることが推奨される。
プレイ時間:約75時間
プラットフォーム:PS5
レビュータイミング:クリア後