「ゼルダの伝説 知恵のかりもの」評価・レビュー

2019年にリリースされ、私自身もクリアまでプレイした「ゼルダの伝説 夢をみる島」の愛らしいビジュアルを見事に継承した完全新作「ゼルダの伝説 知恵のかりもの」。発売から1年越しにようやくプレイし、クリアまで到達できたので、レビュー。

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ゼルダが「勇者」になる日

ゼルダの伝説 知恵のかりもの 紹介映像

1986年の第1作目から38年。ついに、タイトルロールであるゼルダ姫が自ら冒険の主役となる時が来た。本作『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』は、これまでのシリーズが築き上げてきた「剣で戦うカタルシス」をあえて封印し、「知恵を絞って解を導き出す」というゼルダの本質を再定義した意欲作である。

「かりもの」がもたらす圧倒的な自由度

本作の根幹を成すのは、目の前のオブジェクトや魔物をコピーして、いつでも呼び出せる「カリモノ」の力だ。

  • パズルの解法は無限: 崖を登るために「テーブル」を階段にするか、「ベッド」を橋にするか、あるいは「クモ」に糸を吐かせて登るか。プレイヤーに委ねられた自由度は、かつての『ブレス オブ ザ ワイルド』に近い「解法の多様性」を感じさせる。
  • 「借りる」快感: 一度覚えたカリモノは、コストの範囲内で何度でも呼び出せる。この収集要素が探索のモチベーションを常に高く保っている。

戦わずして勝つ、新感覚の戦闘システム

剣を振るリンクとは異なり、ゼルダは直接攻撃の手段をほとんど持たない(剣士の姿になれる特殊能力はあるが、使用時間は限定的だ)。戦闘の基本は、「魔物のカリモノ」を召喚して戦わせるという、さながらタクティカルRPGのような立ち回りが求められる。

相手が空を飛んでいるなら対空性能のある魔物を、盾を構えているなら背後を取れる魔物を。状況に合わせて手持ちのコマを選ぶ感覚は非常に新鮮であり、アクションが苦手な層でも「戦略」で難局を突破できる仕組みは見事だ。

箱庭のような美しさと、広大なハイラル

グラフィックは『 ゼルダの伝説 夢をみる島』(2019年)の流れを汲む、ジオラマ風の質感が採用されている。この愛らしいビジュアルが、広大なハイラルの地と絶妙にマッチしている。

  • 無の世界の探索: 世界のあちこちに発生した「裂け目」から入る「無の世界」は、浮遊感のあるプラットフォームアクションが楽しめる。
  • 伝統と革新の融合: 懐かしのハイラル地方を巡りながらも、ゼルダ自身の視点で語られる物語は、シリーズファンにとっても新鮮な驚きを与えてくれる。

惜しい点

UIの操作性

あえて難点を挙げるならば、カリモノの選択画面(UI)だ。 ゲームが進むにつれてカリモノの種類は膨大になり、特定のアイテムを探し出すために右へ左へとスクロールする手間が発生する。お気に入り登録機能などはあるものの、中盤以降のテンポを削いでいる印象は拭えない。

やや物足りないギミック

折角集めた膨大なカリモノも、ゲーム中盤にもなると、ギミックがパターン化し、特定のカリモノだけで、ほとんどの謎解きがクリアできてしまい、自由度の奥深さが活かしきれていないと感じた。

総評:これは「知恵」という武器を携えた、真の冒険だ

『知恵のかりもの』は、単なるスピンオフではない。「自分で考え、試し、正解に辿り着く」というゼルダシリーズの根源的な楽しさを、アクションではなく「発想」に全振りした傑作である。

剣を使わなくても、ゼルダは間違いなく「勇者」であった。知恵を絞り、ハイラルの地を縦横無尽に駆け巡る体験は、既存のシリーズファンだけでなく、すべてのゲームファンに推奨したい。

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ゼルダの伝説 知恵のかりもの
プレイ時期:2025年10月
プレイ時間:約20時間
プラットフォーム:Nintendo Switch
レビュータイミング:クリア後
シナリオ
グラフィック
音楽
新規性
やりこみ度
良いところ
愛くるしいビジュアル
自由度
ほどよいボリューム
気になるところ
物足りないギミック
かりもの選択の操作性
4