「Lost Records: Bloom & Rage」評価・レビュー

『Lost Records: Bloom & Rage』は、ストーリーテリングに定評のあるDON’T NODが手がける新たなアドベンチャーゲームである。

本作は、1995年の高校時代をともに過ごした4人の少女たちが、27年ぶりに再会することから物語が動き出す――過去に起きた“ある事件”をめぐり、真実と向き合うことになる、静かな衝撃に満ちた作品である。私は「ライフイズストレンジ」のファンでもあり、本作も期待を裏切らない素晴らしい作品であったので、ここにレビューする。


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少女たちの封じた“過去”と、再び向き合う“いま”

物語の軸となるのは、1995年の夏に起きた出来事を封印したまま、大人になった主人公たちが再び交差する現代パートと、その夏の記憶をプレイヤーが追体験する回想パートである。

4人の女性――スワン、ノーラ,オータム,キャット。それぞれが抱える後悔と秘密は、時を経て少しずつ剥がされていく。語られない空白、すれ違ったままの友情、封じた記憶がほぐれていく過程は実に緻密に描かれており、プレイヤーは次第に彼女たちの心の内に共鳴するようになる。

青春のきらめきと、喪失、そして赦し。それらを織り交ぜながら、物語は静かに、しかし確実に核心へと迫っていく。


選択が織り成すマルチレイヤーな語り

本作のジャンルは「ナラティブ・アドベンチャー」であり、基本は会話や調査を通じて物語を進行していく形式である。プレイヤーの選択が人物関係や物語のディテールに微細な変化を与えるため、一見地味に見える行動が、後の展開に強い感情的インパクトを持つ。

本作は、現代と過去を交互に描く二重構成を取っている。プレイヤーは過去の思い出をたどりながら、断片的に隠された真実をつなぎ合わせていく。誰が何を背負い、誰が何を守ろうとしたのか。時間を越えて明かされる秘密は、静かだが確かな衝撃をもたらす。

選択肢の分岐は比較的穏やかであるが、そのぶん一つひとつの選択に感情の重みがあり、プレイヤーの「倫理観」や「共感性」が問われる設計となっている。


90年代への美しいオマージュ

ビジュアルと演出も、本作を語る上で欠かせない要素である。グラフィックはリアル寄りでありながら、どこかドリーミーなトーンで統一されている。1995年当時の小物やファッション、音楽文化へのこだわりは細部にまで宿っており、あの時代を知る者には深い郷愁を呼び起こす。

サウンドトラックには、オルタナティブロックやフォークソングなど、時代感を大切にした楽曲が惜しみなく使われている。特に重要なシーンでは音楽が強い感情の推進力となり、映像と一体化してプレイヤーの胸に迫る。

本作は、日本語字幕はあるものの、吹替えがない点は残念である。また、極めて軽微であるが、一部、翻訳漏れがあり、英字のまま表示されている箇所があった。


まとめ|静かなる名作|“青春”の意味を問いかけるゲーム体験

『Lost Records: Bloom & Rage』は、表面的にはシンプルなアドベンチャーである。しかし、そこに込められた感情の厚みは並大抵ではない。過ぎ去った青春、忘れたい後悔、赦されなかった過去。それらを静かに抱えながら歩む物語は、プレイヤーに「自分にとって大切だったものは何だったのか」を静かに問いかけてくる。

ただストーリーを追うだけではない。選択し、悩み、時に後悔しながら、自分自身も物語の一部となる。この体験は、ゲームという媒体でしか味わえない、極めてパーソナルな旅である。

DON’T NODはまた一つ、確かな“記憶に残る作品”を世に送り出した。物語重視のゲーマーであれば、ぜひ手に取ってほしい一本である。

本作は、非常にゆったりとしたテンポで、物語が進む。エンディングに到達すると、その1つ1つの描写には何も無駄はなく必要なものであるということがわかる。本作は、2025年心に残る隠れた傑作の1つあることは間違いない。

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Lost Records: Bloom & Rage
プレイ時期:2025年4月
プレイ時間:約13時間
プラットフォーム:PS5
レビュータイミング:クリア後
シナリオ
グラフィック
音楽
新規性
やり込み度
良いところ
素晴らしいシナリオ
90年代への美しいオマージュ
気になるところ
日本語吹き替えがない
やや冗長なカメラ撮影
4