「428 〜封鎖された渋谷で〜」評価・レビュー

『428 〜封鎖された渋谷で〜』は、2008年にWiiでリリースされ、その後PS4やPCにも移植された実写アドベンチャーゲームである。複数の主人公が異なる視点から同じ事件に関わり合いながら、選択によってストーリーが分岐するシステムが特徴で、日本ゲーム大賞を受賞したことでも話題となった作品である。私も少し前に、PS4版をクリアしており、改めて本作についてレビューする。

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複数視点で紡がれる傑作実写アドベンチャー

『428 封鎖された渋谷で』 ゲーム紹介トレーラー

本作の舞台は、封鎖された東京・渋谷。連続誘拐事件を中心に、刑事、元ヤクザ、フリーライター、動物の着ぐるみを着た大学生など、個性豊かな5人の主人公が登場する。プレイヤーはこれら5人の視点を切り替えながら1日の出来事を追い、異なる視点から同じ時間軸のストーリーを体験することができる。

5人の行動はそれぞれが影響し合うため、1人の選択が他のキャラクターの進行に大きく関わってくる。たとえば、刑事が犯人を追う選択をした場合、その付近にいる大学生はその行動に巻き込まれる可能性がある。このように、各主人公の選択が別のキャラクターの物語にも影響を与えるため、プレイヤーは適切なタイミングで選択を調整しなければならない。

実写演出のリアリティと没入感

本作は、テキストと実写の写真を組み合わせた独特のスタイルを採用している。一般的なアドベンチャーゲームとは異なり、リアルな渋谷の風景や登場人物の写真をふんだんに用いることで、より現実味を持ったドラマを体験できる。この実写形式は、プレイヤーが「物語の中に存在する」ような臨場感を生み出し、あたかもテレビドラマや映画の一部を自分の選択で動かしているかのような感覚に浸ることができる。

また、登場キャラクターのユーモラスな演技やシリアスな表情が物語の緊張感を増幅し、サスペンスからコメディまで幅広いジャンルを楽しめる。特に、絶妙なタイミングで挿入されるカメラワークや音楽が、物語に深みを与えている。

多重構造のシナリオと選択の妙

本作の最大の魅力は、多層的に展開するシナリオとプレイヤーの選択が物語を大きく左右する点である。選択によってキャラクター同士が交錯する瞬間は、予想外の展開を生み、成功と失敗が目まぐるしく繰り返される。時に選択ミスにより「バッドエンド」に陥ることもあるが、この失敗もまた、別のキャラクターの視点から物語を補完する要素として機能している。

特にバッドエンドを迎えた際、他のキャラクターの視点に切り替え、適切な選択肢を探るプロセスがプレイヤーに新たな試行錯誤の楽しさを提供している。この独自のゲームシステムにより、エンディングにたどり着くまでの過程が複雑に絡み合い、プレイヤーは「渋谷の街全体を巻き込んだ事件」を一歩一歩解き明かしていく感覚を味わえる。


隠しシナリオと追加要素

『428 〜封鎖された渋谷で〜』には、メインストーリー以外にも、隠しシナリオや遊び心に富んだ追加要素が用意されている。これらの要素がゲーム全体の奥行きをさらに広げ、プレイヤーに「何度でも遊びたくなる」魅力を与えている。

隠しシナリオ – 豪華クリエイターによるサプライズストーリー

本作では、物語を特定の条件で進めることで「隠しシナリオ」を解放することができる。この隠しシナリオは、『428』の脚本にも関わっている『Fate/stay night』の奈須きのこ氏とイラストレーターの武内崇氏が手掛けており、ファンからも高い評価を得ている。

隠しシナリオは、メインストーリーからは一歩外れた独自の視点と内容で構成されており、奈須きのこ氏ならではのミステリアスで幻想的な要素が組み込まれている。独特の文体と設定が「渋谷封鎖の謎」に別の側面から光を当て、通常のアドベンチャーゲームにはない「もう一つの世界観」を楽しむことができる。奈須きのこのファンにとっても見逃せない追加要素である。

「エコ吉ドアドア」 – ユーモアたっぷりのミニゲーム

さらに、ゲーム内にはシュールな雰囲気が漂うミニゲーム「エコ吉ドアドア」が用意されている。「エコ吉ドアドア」は、環境保護キャラクター「エコ吉」が登場する、ユーモラスなゲームで、渋谷の街に設置された「ドア」を次々と開けていくというシンプルな内容だ。独特のノリとコミカルな演出が加わり、メインストーリーのシリアスな展開とは一線を画した、気軽に楽しめる一幕となっている。

「エコ吉ドアドア」は、特にシリアスなシーンが続く中での息抜き要素として機能しており、プレイヤーに一息つかせると同時に、ゲーム全体の雰囲気を緩和する役割を果たしている。緊張感が漂う本編とは一味違ったこのミニゲームは、プレイ体験をより豊かにしてくれる。

その他のボーナス要素

本作には、特定の条件を満たすことで開放される追加エピソードや、トロフィー的なコレクション要素も備わっている。バッドエンドも含めたエンディング数が豊富で、全エンディングを集める楽しさがあるため、単なるクリアにとどまらず、「完全制覇」を目指すプレイヤーにとってもやり込み要素が充実している。

まとめ

428 〜封鎖された渋谷で〜』は、リアルな舞台と重厚なストーリー、プレイヤーの選択が絡み合うことで生まれる緊張感と達成感が魅力の作品である。実写アドベンチャーという独特の形式と緻密に計算されたシナリオが融合し、唯一無二の体験を提供している。

プレイするごとに新たな視点や発見があり、何度も繰り返し遊びたくなる奥深さがある。アドベンチャーゲーム好きにはぜひ一度プレイしてもらいたい、傑作と呼ぶにふさわしい作品である。

「428 〜封鎖された渋谷で〜」評価・レビュー
プレイ時期:2018年9月
プレイ時間:約20時間
プラットフォーム:PS4
レビュータイミング:クリア後
シナリオ
グラフィック
音楽
新規性
やり込み度
良いところ
魅力的なシナリオ
サウンドノベルの究極
気になるところ
特になし
4.1