PS4のまさに集大成ともいうべきタイトルがひしめく2020年。そんな中でも期待の1本であった「GHOST OF TSUSHIMA」。もはや神ゲーであらねばならなかった使命をもってリリースされた待望の新作。早速プレイし、クリアすることができたのでレビューする。
本作は、日本の対馬を舞台にした歴史・戦国をテーマとしたゲームでありつつも、海外のゲームスタジオ「サッカーパンチプロダクション」が制作している。一般的に、海外のゲームスタジオが、このような日本を舞台にしたゲームを作ると、誤った”日本観”のもと、とんでもないゲームが作られてしまうことが多い。忍者キャラが登場したり、中国文化と日本文化がごちゃませになったような、世界観で仕上げてくることも日常茶飯事である。
そんな中、本作は、海外のクリエイターが制作したとは思えないほどの圧倒的なクオリティで「日本」の舞台を再現しているのである。その空気感や日本人の表情、日本人が持つ心情の描写など、日本人の自分以上に日本を理解し制作されたことが伝わってくる。実際、本作を開発するにあたり、クリエイタたちは、対馬に取材を重ね、作品への説得力を積み上げてたとのエピソードもある。
本来であれば、日本のゲームスタジオからこのような作品が登場してもよいと思われるが、時代は違えど、現代の日本人が本作をプレイしても、まったく違和感を感じないプレイフィールに仕上がっている。ただただ、日本人として頭が下がる思いである。
美麗なオープンワールドと大満足なボリュームと重厚なシナリオ
本作は、美しい日本の情景を描いたオープンワールド作品となっている。私自身、数多くのオープンワールドゲームをプレイしてきたが、そのなかにおいても、トップレベルに美しいグラフィックで、どこを切り取っても絵画的に仕上げられた作品になっている。
ゲームのグラフィックという観点では、個人的には、おそらく「The Last of Us Part II」のほうが、1つ1つのオブジェクトの描き込みの密度は高く、リアリティが高いと思われるが、本作は、一枚の絵として見たときの全体的な美しさで、上回っていると感じた。遠くに見える海や、森林の深さなど、忘れかけている日本の源流を改めて感じさせてくれる。
そして、本作には、美しい日本風景と合わせて、圧倒的に重厚なシナリオが用意されている。かつて、対馬へ侵攻してきたモンゴル帝国軍に対し、武士軍の中で唯一生き残った主人公、境井仁が、己の「侍」としての「誉れ」との葛藤を抱きながらも、幾多の困難を乗り越えて、様々な仲間とともにモンゴル帝国軍に立ち向ってゆく。ストーリも非常に人間味に溢れていて、続きが気になってやめ時を失うことが何度もあった。それほどに没入感が高い。
文永(十三世紀後半)、モンゴル帝国(大元)は東方世界の征服をもくろみ、立ちふさがるすべての国を蹂躙していた。
東の果て、日本に侵攻すべく編成された元軍の大船団を率いるのは、冷酷にして狡猾な智将、コトゥン・ハーン。ハーンは、侵攻の足掛かりとして対馬に上陸する。
これを防ぐべく集結した対馬の武士団は、初めて見る元軍の兵略によって初戦で壊滅。島はたちまち侵略の炎に包まれる。だが、かろうじて生き延びた一人の武士がいた。
境井 仁(さかい じん)。
仁は、境井家の最後の生き残りとして、たとえ侍の道に反した戦い方に手を染めることになっても対馬の民を守ろうと決意する。
冥府から蘇った者「冥人(くろうど)」として、あらゆる手段を使って故郷を敵の手から取り戻すのだ。
https://www.playstation.com/ja-jp/games/ghost-of-tsushima/
心地よい剣術の操作感
本作では、敵との闘いは、基本的に剣戟アクションによって行われる。非常に明快な操作性で、高難易度ゲームの「SEKIRO」のようなシビアな設計ではなく、ゲーム初心者でも十分にこなせるレベル曲線になっている。敵を切ったときは、時代劇の殺陣(たて)でお馴染みの”あの倒れ方”をしてくれるあたりも非常にユニークだ。
ただ、カメラワークに癖があり、自動で自キャラを追ってくれないため、やや闘いづらい局面が生じることもあった。しかし、私自身としては、中盤くらいには慣れてしまい気にならなくなるレベルであった。
また、本作ではプレイを進めていくなかで、様々な能力や戦術、武術を体得することが可能で、戦闘のバリエーションが増えていくと、敵を一気に無双できるようになり、爽快感も素晴らしい。本当に「侍」になりきれる初めてのゲームと言ってよいレベルと感じた。
手抜きのないサブクエスト
昨今のオープンワールドゲームでは、サブクエストの「質」も評価ポイントになっているが、本作におけるサブクエストは、ほぼ不満のない素晴らしい出来になっている。主人公に寄り添う各サイドキャラクタごとに、サブストーリが用意されており、それぞれが濃密なシナリオになっており、本編同様、1つでも見過ごすことに抵抗があるくらいによく作り込まれていると感じた。
全体的に重たい雰囲気の本作の中で、酒売りの堅二のサブクエストが、ほかのやや悲壮感あるストーリとは異なり、陽気で笑いがあり楽しかった。
後半冗長になる遊びの幅
本作は、圧倒的に高いクオリティによって、統制を取られた作品に違いないが、どうしても、全体のボリュームが大きいゆえに、ゲームの「遊び」という点において中盤あたりから繰り返しに感じる部分が目立ってくる。クエスト→馬による移動→敵との剣術→クリア というある種パターンが出来上がってしまっているからだ。
もちろん、オープンワールドの方程式としてこのような形は否定するつもりはないし、ましてオープンワールド初心者にとっては、このような形であっても、終始新鮮な気持ちで楽しめたと思われる。ただ、ある程度、ゲームを触ってきたプレイヤーにとっては、もう少し遊びのバリエーションが欲しいと感じるのではないかと思った。
オンラインマルチプレイ「Legends(冥人奇譚)」無料配信中!
本作は、一人用キャンペーンだけでも圧倒的なボリュームと内容を誇る上に、マルチプレイモードが追加実装され、2020年10月30日に配信が開始された。しかも「無料」というから驚きだ。
このモードは、本編とは独立しており、主人公の境井仁も登場しない。ステージクリア制のオンライン協力型マルチプレイモードとなっている。独自の成長要素が用意されており、本編とは異なる楽しみ方ができそうだ。難易度も高く、フレンドがいれば、さらに「GHOST OF TSUSHIMA」の世界に浸れそうである。
プレイ時間:約60時間
プラットフォーム:PS4 pro
レビュータイミング:クリア後