2019年に発売され、あまりの完成度の高さにジワジワと口コミでその評判が広かった「十三機兵防衛圏」。13人の主人公が、それぞれの視点で物語を紡ぎ、やがて1つの結末へ到達する。そんな群像劇的なアドベンチャーと、13体の騎兵を使って敵と戦うタワーデイフェンスのパートが織りなす、ボリュームたっぷりの作品。
恋愛、SF、ミステリー、タイムリープ、昭和ノスタルジーなどなど、およそ考えられるこの手のジャンルがごちゃ混ぜてんこ盛りの内容。そんなゲームだが、ようやくプレイすることが出来たので、早速レビュー。
重厚かつ難解なシナリオ
本作を制作したアトラスのディレクターも「もう2度とこのような作品は創れないだろう」とまで言わしめた、重厚かつ複雑なシナリオ。13人の主人公、それぞれに強烈な個性や設定があり、プレイヤーは、アドベンチャーパートで、それぞれの過去の出来事を断片的に追いかけてゆく。
しかし、語られる時系列がバラバラで、登場人物も13人と多いため、片手間に本作を手に取ると頭がついていかない可能性もある。実際のところ、私が年を取ってしまったからなのか、冒頭から多数の固有名詞が飛び交っていたこともあり、シナリオについてゆくことが出来ず、プレイを断念しかかったこともあった。
シナリオは、正直難解。集中力を高めて、じっくりと理解しながら、プレイすることが必要。
抜群の雰囲気の2Dグラフィック
一目見て印象に残る、絵画のようなグラフィック。背景の細部に至るまで丁寧に描かれている上、登場人物のアニメーションも非常に凝っている。特に、西日が差し込む校舎内の表現は最高レベルに素晴らしい。登場人物が、パンやクレープを食べるシーンがあるのだが、なんとも愛らしい表現で、まさに芸が細かい。おそらく制作にあたっては、とんでもない時間と手間がかかったものと想像される。アニメ画は敬遠してしまう方も、この色調、タッチの絵柄であれば抵抗もないのではないだろうか。
細やかなUI
本作は、なかなかの長大なボリュームを誇るゲームで、大半をアドベンチャーパートが占める。また、一部繰り返し試行錯誤する必要のあるパートもあり、ややもすると作業感があるのだが、その辺りも早送りが出来たり、また複雑なシナリオも、親切なログ機能によって、あとからセリフを見返すというようなこともできる。こうしたUI回りも昨今のゲームにおいては、重要な評価ポイントとなるが、その辺りも手を抜いていない。
タワーディフェンス系RTS
本作のもう1つの顔とも言える戦闘パート。これは、13人の主人公が「機兵」と呼ばれるロボットに乗り込んで、攻め込んでくる敵と戦うシーンをプレイする。ゲームデザイン的には、「タワーディフェンス」の要素を取り入れたRTSバトルというイメージで、約30ステージほどあるためボリュームも十分だ。主人公たちの機兵も武器や能力をアップデートすることが出来るため、進めるごとにその面白さにはまってくる仕様になっている。
残念な点としては、このパートのグラフィック表現が、デフォルメされており、自分の機兵や敵がアイコンで表現されてしまっているため、破壊表現等が乏しくやや迫力に欠ける。一応、ゲーム上の設定であえてこのようにしていることは理解しているつもりではあるが、物足りなさを感じた。
また、後半になると、ある能力を上げてしまうと、ゲームバランスが一気に崩れ、進めるのが容易になってしまう。もっとヒリヒリとしたゲームプレイを期待する人にとっては、やや簡単すぎると感じる人も多いかもしれない。
まとめ
この作品は、作風やシナリオの難解さから、人によっては合わないと感じる人もいるかもしれない。事実、私はシナリオは、全容が理解できず、歯がゆい状況が続いた。
しかし、この作品が膨大な制作者たちのエネルギーとクリエイティブの集約の結果、完成したものであるということは、伝わってきており、ぜひ売れて次作につながってほしいと感じる。
本作を一言で表現するなら「狂気」。
プレイ時間:約56時間
プラットフォーム:PlayStation4 Pro
レビュータイミング:クリア後