「NAYUTA STUDIO」という名のもと、プログラマとデザイナーの2名体制という超少数体制で、2年半かけて作り上げたインディータイトル「ウツロマユ – Hollow Cocoon」。
インディーゲームとは、信じがたいビジュアルとともに、そのゲームとしての面白さも相まってSNSでも話題となった。私も早速プレイし、クリアまで到達できたのでレビューする。
AAAタイトルにも並ぶ高品質ホラーアドベンチャー
本作は、少数精鋭で制作された作品であり、非常にコンパクトながら、シナリオ、ビジュアル、遊び、ゲームバランスといった、様々な要素がバランスよく仕上がっている。
印象的で切ない読後感のあるシナリオ
本作は、80年代日本を舞台としたホラーアドベンチャーとなっている。冒頭の主人公とその父親との電話のやり取りから始まる。
父から祖母の危篤の知らせを受けた主人公は、母の故郷にある深山家に訪れる。深山家にかつで住んでいた使用人の日記や親戚にあてた手紙やメモといった資料から、かつて屋敷で起こった悲劇や深山家の歴史を読み解いていく。
物語終盤には、その謎が徐々に明らかになり、衝撃の結末を迎えるストーリとなっている。
驚異のビジュアルで作り込まれた日本家屋
本作は、二人で作り上げたとは思えないほどの驚異のビジュアルで作り込まれている。バスを降りたその瞬間から、日本の田舎のあの雰囲気がじっとりと伝わってくる。古びた自動販売機や看板、そして駄菓子屋などで見かけた懐かしいコインゲーム。舞台となる深山家の日本家屋もその質感含め非常に高レベルな次元で作りこみがなされている。
バイオハザード7へのリスペクトを感じるゲーム性
本作は冒頭の雰囲気や導入などは、「バイオハザード7」の影響を色濃く受けたであろう作りになっていると感じた。一人称視点、MAPやメモテキストの表現。アイテムや鍵を使った謎解き要素など、随所に「バイオハザード」風の遊びが取り込まれている。
また本作では、敵クリーチャーが登場するが、基本的には戦闘はなく、逃げたり、隠れたりといったステルスが1つの遊びの要素になる。敵クリーチャーの場所やその動きも予測しづらいことが恐怖度を高めており、終始ヒリヒリとしたプレイ感が続く。
慣れないと難しいと感じる部分もあるが、回復薬もそれなりに用意されており、ホラーゲームに慣れていないプレイヤーでも突破出来るバランスになっている。もちろん、ゲーム途中での難易度の変更も可能だ。
「バイオハザード7」や「エイリアン・アイソレーション」等が好みのホラーゲーム好きには、特に楽しめる内容になっている。
制作陣の遊び心を感じるリプレイ要素
本作では、最終局面で選択肢が用意されており、プレイヤーの選択によって、シナリオが変化する、いわゆるマルチエンディングの形をとっている。
また、周回プレイ要素として、ゲーム本編で用意されているコインゲームで集めたポイントを使うことで、ゲーム本編とは大きくずれた「遊び心」に満ちた別のシナリオも用意されている。
このあたりは、インディゲームならではであり、制作陣の遊び心を感じる部分で好印象だ。
新たな和製ホラーの快作
本作は、1周、3~4時間程度でクリア可能なボリュームとなっており、ホラーゲームでありながらも、読み切りの上質な小説を読んだような心地よい読後感に包まれる内容で、色々な方にお勧めできる和製ホラーゲームの傑作と言ってよいだろう。
プレイ時間:約3時間
プラットフォーム:PC
レビュータイミング:クリア後