2020年、PS4最大の話題作と言ってもよい、The Last of Us Part IIを遂にクリア。発売前は、各種メディアで大絶賛の嵐で「神ゲー」確定と言われていたが、実際にプレイしたユーザからは、まさに賛否両論、数えきれないほどの意見が交わされた模様。私のこのゲーム史に残るであろう本作をプレイできてうれしく思う。
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ノーティドックの完璧なまでの総決算
ノーティドックは、本作以外にも「アンチャーテッド」シリーズなど、数々の名作を送り出しているが、本作はまさしく最高にお金をかけて、最先端の技術、最高のエンジニアを駆使したらこんなゲームになりますよ、ということを体現してくれたような作品だ。
目を見張る驚異のグラフィック
同社の作品の特徴として、圧倒的なグラフィック表現がある。その時々のハードの限界を突破したゲームグラフィックスを堪能させてくれるのも楽しみの1つだ。そういった観点で、本作のグラフィックスはまた1つあらたなレベルに到達したと言ってよいだろう。
もしかすると、PCゲームにおいては、解像度やフレームレートといった点から、本作より優れたグラフィック表現のゲームも存在すると思われるが、少なくとも、本作の尋常ではない”作りこみ”という点では、現存するゲームとして、トップに君臨していると思われる。
つまり、グラフィック自体も素晴らしいが、3Dで展開される街並みや建造物、木々、足跡、部屋に置かれた装飾品、キャラクターの表情や動作といった、単純にハード性能だけでは成しえない、クリエイターの作りこみが本当に凄まじいレベルで仕上がっているのだ。
個人的には、主人公がロープを投げるようなシーンがあるが、そのロープの動き1つとっても、ほかのゲームでは見たことのないレベルになっている。途中、ゲームであることを忘れるような錯覚さえ覚えた。
#ラスアス2 ロープ関連の挙動やばいな。ロープのどこでも持てて、持った場所に応じていい感じにたぐりよせて巻いてくれる。地形にからませてもしっかり絡む。https://t.co/OrGVJ6rXNf pic.twitter.com/U7FvAWdYqh
— ニカイドウレンジ (@R_Nikaido) June 20, 2020
こうしたこだわりが、たった一瞬で通りすぎ去ってしまうような背景にも、惜しげもなく贅沢に取り込まれている。本当に、何度も立ち止まったし、逆に手抜きしているところは無いものかと、探してしまうほどであった。
前作を踏襲した正統進化
本作は、タイトルの通り、The Last of Usの続編である。感染者(ゾンビ風のクリーチャ)や、敵組織との戦闘と、街中の探索、アイテム工作、そしてキャラクター同士のドラマパート(イベントシーン)が、順繰りに展開されるつくりとなっている。このあたりは、前作と同じ仕組みだ。敵キャラのAIレベルが前作より賢くなっていたり、敵側のNPC一人ひとりにも、名前が付けられており、例えば、一人を撃ち殺すと、仲間が名前を呼んで翻弄する様な演出を見ることができ、前作よりも丁寧に作られていることが分かる。
ただ、悪く言うと、前作と比較して、ゲームシステムとしては前作から大きな進化や新しい遊びはなかったのではないかと思われる。登場する感染者の種類やその攻略方法も、ある程度パタン化されているし、決して怖くないわけではないが、次第に既視感を感じるようになってくる。
1点前作との違いがあるとすると「犬」が登場することだ。敵側には、犬を連れたNPCが存在し、当然その犬も、こちらを狙ってくるし、嗅覚を利用して追跡してくる場合もある。動物好きの私には、犬と戦闘することは避けたい気持ちもあったが、結果殺さざるを得ず何とも言えない気持ちになる場面もあった。
賛否両論の演出
本作では、すでに世界中のプレイヤーにより様々な感想やレビューが寄せらえているが、その内容は完全に賛否両論、真っ二つに分かれているような印象だ。神ゲーと称するものもいれば、前作の良さをぶち壊した史上最悪のクソゲーと揶揄するものまで。その論争になっている要素は大きく2点あると思っている。
ポリコレ要素
昨今、多様性(ダイバーシティ)を認めよう、LGBTへの差別をなくそうといった、「ポリコレ」と言われる社会的風潮もあってか、本作もその影響を受けていると思われる。性別・人種・民族・宗教などすべての要素がゲーム中に散りばめられている印象だ。
ポリコレとはポリティカル・コレクトネスの略称で、性別・人種・民族・宗教などに基づく差別・偏見を防ぐ目的で、政治的・社会的に公正・中立な言葉や表現を使用することを指す。
特に主人公のエリーは、同性愛者で、プレイヤーは、女の子同士のキスシーンなどを見せられる演出が盛り込まれている。前作のDLCからそうした要素は、隠し味程度にあったともいえるが、今作では、ゲームとしては中々に生々しく、それも数度にわたって描写されるので、なかには抵抗があったプレイヤーもいたのではないかと感じた。
他にも、女性キャラクターが大いに躍進しており、メインキャラクタでは多くの男性キャラが死亡するのに対し、女性が死亡するシーンは少なかった印象を覚えた。ゲームにポリコレ要素を持ち込んでほしくない層がいる一方で、このような流れは、多かれ少なかれ、その時々の社会情勢や文化の影響を受けながら変化していくものであるし、このゲームがポリコレを意識したものであると感じるか否かもプレイヤーの感じ方次第である。
絶賛と酷評 前作ファンを裏切る演出
前作で、ジョエルという中年男性と、本作の主人公である女性キャラクタ、エリーの愛に満ちた道中と奇跡的なラストに多くのプレイヤーたちを魅了し、もはや続編を作ること自体が不可能とさえ言われていた。
そんな中で、本作は「復讐」というテーマのもと、前作から4年後を舞台に物語がスタートする。ゲームの冒頭で、前作、あれほど屈強に戦い、エリーを護ってきたジョエルが、いまいち素性のよくわからない女性キャラ、アビーに、エリーの前でなぶり殺しに合うのである。
その殺害自体も、近年のゲームの中でも、とりわけ残虐な描写で演出される。本当に、痛々しく、アビーに復讐してやりたいとプレイヤーである私自身も、エリーと同じ気持ちにさせられたのだ。そして、このジュエルを殺したアビーという女に復讐するためのストーリとして、苦々しく、陰鬱した気分で本作は展開されていく。
しかし、ノーティドックは、とんでもない仕掛けを用意した。なんとゲーム後半からは、エリーにとって代わり、プレイヤーはアビーを操作し、復讐相手であるアビーの物語を推し進める形になるのだ。
本当は憎むべき「悪」でしかないはずのアビーも、所詮は人間であり、周りに家族や友人、恋人がいて、普通の生活をしていた女性なのだ。ジュエルを残酷なまでに殺害したことにも一定の理由があり、それが語られていくのである。
それぞれの立場で正義があり、「復讐」は、虚無であり、無意味であるということをノーティドックは暗に伝えようとしたのかもしれない。ただ、多くのプレイヤーにとっては、このようなアビー編は本当はどうでもよかったのかもしれない。もっとシンプルに復讐劇をプレイしたかったし、ジョエルとエリーを引き裂いた悪の根源であるアビーに純粋に仕返しをしたかった。そういったところが、前作ファンとしては、なんともやり切れず、受け入れがたい作品になってしまったのかもしれない。
余談ではあるが、以前下のような広告が話題になったことがあるが、ふと本作を通じて、これを思い出してしまった。
まとめ
本作は、前述の通り、賛否両論が巻き起こるほどの今年最大の話題作と言ってよい。また、技術面、演出面においてもゲームの1つの「到達点」とも言える内容になっていると断言してよいだろう。
もしPS4を所有しているゲーマであるならば、絶対にプレイすべき歴史的大作だ。
プレイ時間:約25時間
プラットフォーム:PlayStation4 Pro
レビュータイミング:クリア後